こんにちは、茨城で創業融資、事業用資金融資をサポートしている行政書士兵藤貴夫です。
その3の続きです。
それからしばらくして、その店に入ってみると、その逃げたはずの美人妻がカウンターの中に立っています。
私の姿を見つけたマスターが寄ってきて、その奥さんの方を見ながら
「こいつも『反省している』というからさ。今度だけは許してやろうかと思って」
とにこにこして言っています。
さすがに
「それはちょっとお人好しすぎ・・・」
とは思いましたが、黙っていました。
その妻については一度同郷らしい留学生と母国語で話しているのを見ましたが、当初の清楚な雰囲気は微塵もなく、態度は粗野そのもので、随分と短期間に変わったと感じました。
その後店では何回か、その妻を見かけましたが、あるときからまたぱったりとその姿を見なくなりました。
マスターは何も言わず、黙々とカウンターの中で料理を作っています。
さすがに、今回は何が起こったのか聞かなくても理解できました。
それから数ヶ月立ったと思います。
あるときそのレストランに入って、いつものように注文をすると、マスターが
「材料足りるかな」
などと独り言を言っています。
そして自分が食べ終わって、代金を払って帰ろうとすると、マスターが自分の前に立って
「兵藤さん、俺田舎に帰るからさ。今までありがとう」
と言って握手を求めてきました。
呆然とした気持ちともの悲しさを抱えてアパートに戻りながら
「マスターと無理してでも一度飲めば良かった」
とだけ思いました。
以上が自分が体験したあるつくば市の創業者の事件です。
このまま終わったのでは、創業希望者にさして参考になりそうもないので、少しそれらしいことを書いておくと、起業者のコンサルティングのときに確認していることに
「家族の同意は得られているか?協力は得られるか?」
というものがあります。
これは当然、一番集中しなければならない創業時に、家庭内が安定していないと、大きくモチベーションに影響する、つまり成功の確率が低くなるということです。
これは日本公庫の面談でも確認されることが多くあります。
このマスターも、結婚相手を間違えなければ、せっかく軌道に乗っている店を閉めることもなかったと思います。
もしも配偶者や同居している親などが反対している場合には、まずその説得から始めるのが、事業成功への近道なのでしょう。