創業融資を申請するメリットというのはいくつもあるのですが、最近感じているのは
「借金するメリット」
です。
融資は借金ではないという意見はさておいて、要するに「借金を返済しなければならない」というプレッシャーを自分にかけることで、自分の能力を引き出すということです。
創業融資を得ないで起業する理由はいろいろあります。
1.返済できる自信がない
2.プライドの高さから借金したくない
3.自己資金が十分以上にあって、そもそも融資を受けるという発想がなかった
4.信用情報などに問題があって融資が下りない
今回対象にしているのは3の自己資金が十分にあるケースです。
自己資金が潤沢にある場合、手持ちの現金でとりあえず事業に必要なものが購入できて、当座の生活費もまかなうことができることから、起業のストレスはだいぶ軽くなります。
起業したばかりと言うのは、一番「もがかなければならない」時期であるにもかかわらず、独立した自由を謳歌してしまうわけです。
かつてある給与所得者が「独立してのんびりやりたい」と言っているのを聞いて呆れましたが、いただくメールの中にもそういう趣旨のものがあります。
特殊なケースを除いて「独立してのんびり」などできません。
起業直後は特にそうです。
自己資金だけで開業して予定していた売上が立たず、資金が底をつき融資を求める相談は何度も受けているのですが、たいてい当初から「もがいていれば」少しは結果は違ったと思えることが多くあります。
自己資金だけで開業すると、誰にも相談する必要がない、失敗しても誰にも迷惑をかけないという意識から、どうしても「覚悟」や「もがき」が甘くなります。
また十分な自己資金があると言うことは、それだけ長く雇用されていたことでもあり、知らずの内に発想が、その雇われ人のそれになっていることもあるでしょう。
その人がどれだけの潜在能力を持っているのか、当の本人も周りの人間も正確にわかっている場合などありません。
「もうだめだ」と思ったときでも、自分でも気が付かなかった内なる力にめざめて、新たな行動が可能となることがあります。
若くして起業して、財産をなし、成功した起業者として有名になった人でも、そういう「紙一重」の状況、いわば修羅場をくぐってきているのです。
もちろん当人にとっては苦しみしかない状態であり、望んでそんな状況に自分を追いやることなどなかなかできません。
融資を得ると言うことは、起業者の覚悟を少しでも持って、その自分の潜在能力を少しでも引き出すために有効なのではないかと考えています。